音楽夏期合宿に見た松風塾高生の万事入精の世界             

 二学期初めての朝会です。皆さんとこうして一堂に会するのは七月十八日以来ですので、なにか懐かしい感じがします。
 先ほど週番の生徒から、今週までの「礼節の励行」の目標は達成されたと報告がありました。その理由として、先週は学園祭があったためか、みんなで来校する人達への挨拶をしっかりと守りお迎えしようという心意気があったので、一人ひとりが相手の目を見て挨拶するのに心掛けたからだったのでしょう、という話でした。「大切なのは、普段の日常生活での挨拶が、先週のように励行されるかである」という話には、力がこもっていました。確かに、普段の日常生活で守るべきことをしっかりと守っていけるかどうかで、それが身についた躾かどうかを計る基準となりますね。「礼節日本一」を目指している松風塾ですから、一人ひとりが普段から礼節に満ちた学校となるように率先躬行し、皆で礼節日本一の目標に向かって邁進して行きましょう。
 今日は、皆さんに平成二十六年九月号の『致知』に掲載されている「特集・万事入精」という記事を配布させて貰いました。
 「万事入精」とは、「万事に丹精を込めていく」「あらゆることに誠心誠意を尽くしていく」という意味だそうです。この記事には、ヤナセの創業者・梁瀬次郎さんが親しかった時の総理大臣吉田茂氏から、次のようなことを聞いたということが書かれています。
 日本は戦争で全土が焦土と化した。その日本が僅かな期間で目覚ましい復興を遂げた。なぜだと思う。資源など全くない日本がなぜこんなにも早く復興できたのだろうか。日本には一つだけだが、貴重な資源があったからだという。それは日本人の勤勉性という資源だ。
  この言葉に梁瀬さんは、膝を打って共感したそうです。日本は、資源がない加工貿易国であることは、皆さんは既に勉強し、理解していることだと思います。資源のない国日本が、世界を相手に競争し勝っていくためには、より良い製品を作る高い技術力を身につけていくしか生き残る道はありません。それは、日本の国是でもあります。そして、その高い技術力を生み出して行くには、勤勉性が不可欠です。仕事に向かっていく姿勢が不真面目であっては、新たな技術開発が生まれません。日本人の勤勉性が戦後日本の復興を促す力となったのです。
 まさに、「勤勉性は万事入精と同義」で、梁瀬さんも「何事も疎かにせず、懸命に取り組む。一億国民の勤勉性、即ち万事入精の精神が日本の驚異的な復興の基であったことを私達は肝に銘じたい」と、述べています。共感しますね。
 さて、今日は、夏期休暇中の音楽合宿の感想文を二年生に書いて貰いましたので、その中から男女一人ずつの感想文を紹介します。
     音楽合宿を終えて  二年女子 E・A 
  最初は不安で仕方ない日々でした。「皆についていけるか」「スランプに陥ることはないか」と気が抜けませんでした。でも不思議と嫌ではありませんでした。不安だけど「頑張ろう」という気持ちは消えませんでした。合宿を気が沈むことなく終えることが出来たのはきっとこのお陰も入っていると思います。やり遂げたという感覚に包まれた最終日でありました。
  しかし、何もかもがスムーズに進んだわけではありません。練習しても練習しても出来なくて、少し暗い気分に押しつぶされました。が、ヘコたれず諦めずに眺めていたと思います。音楽、音楽の毎日で道を歩んでいけたのは、分からない所をやさしく、そして、ていねいに教えてくださった澤田先生。人間関係と音楽の悩みで頭がごちゃごちゃになって、どうしたらいいか分からなかった時、いつもちゃんと話を聞いてくれ、的確な意見をくれたお母さん。そして毎日一緒に練習した同期の存在。沢山の方々のお陰でここまで前進することが出来ました。感謝しています。ありがとうございました。
 さて、青森定期演奏会まで約一ヵ月をきりました。初めは音符も読めない私が演奏出来るようになる姿は、想像も出来ませんでした。ですが、現在はある程度音符も見ると分かるようになりました。ある日、澤田先生が「音楽はやった分だけ結果はついてくる」とおっしゃいました。全くそうだと思います。しかし、これだけで満足はしていられません。綺麗なトレモロや強弱がしっかりとつけられている演奏、これが私の目標です。まずはこれ、という感じですね。この目標に向かって少しずつ前進していきたいです。周りの方々からのご恩も忘れずに。
次に、男子生徒の感想文を紹介します。
     音楽合宿の感想  二年男子 N・D 
 音楽合宿。僕にとってすごく身になるものだった。
 音楽合宿。僕にとって、天国だった。なぜかというと……。
 僕は、とっても音楽の好きな少年だ。僕にとって、音楽は、夢であり、幸せであり愛である。そして、魔法でもあると思っている。そんなすばらしい音楽につかってられると考えたら、幸せである。
 音を楽しむ!音楽合宿は、もちろんつらい時もあったが、その苦しみ、つらさを楽しんで僕は、音楽合宿を楽しんでいました。
 また、音楽合宿で、お世話になった方々には、ものスゴク感謝をしております。
 毎日のように食べたおやつやアイス、そしてドーナッツなど……。周りからの声、
 「頑張ってね」の言葉は、僕らの元気となりました。
 しかし、そんな合宿も終わってしまい、そして今、僕という人間は、今もなお常にギターを触っているだろう(実際に触っている)。音楽を愛しているだろう。
 僕は、改めて、音楽には、ステキな魔法があると思いました。これからもずっと音楽を楽しんで、素晴らしい四十期の音楽を作っていきたい。 
  こんなユニークな感想文は、今までになかったと思います。いずれにしろ、夏休みの音楽合宿は、非常に有意義であり、同期の絆を強めることにもなったし、音楽に対する意識も強まってきたようです。支えられながら練習できたことや、人間的にも成長できたことが、皆の感想文から伝わってきました。
 また、皆さんの感想文からは、合宿期間中は、万事入精、つまり「丹精を込め」「誠心誠意」心を込めて練習に励んだことが伝わってきました。二年生の皆さんは、一生懸命練習したのでしょう。(ハイ)万事日精とは、そういうことです。「何事も疎かにせず、懸命に取り組む」ことが道を開いて行くことになるのです。戦後、廃墟となった日本は、国民一人ひとりが一生懸命に働き、日本復興のために努力してきたからこそ、今日の繁栄がもたらされたのです。国民一人ひとりの勤勉性が日本の資源で、産業復興の力になってきたのです。このことを、皆さんも理解して下さい。そして、高校生活も、万事入精の心をもって三年間を送っていくと、必ず皆さんの人生は開けていくと思います。それを心に据えて下さい。最後に、『安岡正篤一日一言』にある「傳家寶」という題の中にある次の一節を読んでみましょう。
    事の前に在りては怠惰
    事に当たっては疎忽
    事の後に於いては安逸
    是れ百事成らざる所以なり

    大事なことがあるのに準備もしないで怠けている。
    実行の場面ではいい加減で軽率。
    終わったら何の反省もせず、ああやれやれと気を緩めてしまう。
    こんなことを繰り返していては何事も成功しない。
という戒めの一文です。じっくり読んでみて下さい。何事にも、用意周到であることが必要です。そして、ことに当たっては、真剣勝負です。
 終わったら、反省会を開きどこが悪かったかを省みて次回からの反省点とし、回を重ねていく度に一歩一歩改善していくように勉めていくことが大切なことです。
 皆さんも、「この教えを噛みしめたい。ことの前にあっては準備万端、ことに当たっては全身全力、ことの後には必ず反省・検証する。私達はこの姿勢を忘れてはなるまい」と述べていることを、しっかりと心に留めて、各学年の立場で今なすべきことを怠りなくなしていって下さい。
  次に、「『森信三訓言集』は万事入精の人生を生きるための心得が随所に散りばめられた名著である。そのいくつかを紹介する」として、次の一節が紹介されています。読んでみましょう。
    ▼人間は片手間仕事をしてはならぬ。やるからには生命を打込んでやらねばならぬ。
    ▼人間の修養は一つずつである。その時その時、自分の為すべきことを正確に行うことである。
    ▼すべて一芸一能に身を入れるものは、その道に浸り切らねばならぬ。躰中の全細胞が、画なら画、短歌      なら短歌にむかって、同一方向に整列するほどでいなければなるまい。
      つまりわが躰の一切が画に融け込み、歌と一体にならねばならぬ。
  九十七年という人生を万事入精の心で生きられた森信三先生の原点の言葉だそうです。 最後に、こうした森信三先生の生きざまを、「拳々服膺したい」(片時も忘れずにしたい)と結んでいます。
  皆さんも、人生の生き方、生きる姿勢として、今日紹介しました安岡正篤師の戒めの言葉、森信三先生の「生きるための心得」を心の指針とし、今なすべきことに万事入精の心で、取り組んで下さい。そして、後悔しない高校生活を送って下さい。
                                ( 2014.09.04)