「はい」「もったいない」「はたらく」の三つの言葉から知る日本の心

 今日は、「はい」「もったいない」「はたらく」という三つの言葉を通して、日本語に表れた「日本の心」を考えてみたいと思います。
 返事としての「はい」という意味は、「拝」で「おがむ(拝む)」といういう意味があるのだそうです。ですから、「はい」と返事することは、無意識のうちに相手を「拝んでいる」のだそうです。「はい」と返事することは、呼んでくれた相手を「拝む」ことなのです。ですから呼ばれたら、元気よく「はい」と明るく、大きな声で返事をしていきましょう。
 そこで、相手の何を「拝む」かというと、相手の命の本質である神性、仏性を拝むのです。
 日本人は、ヒトを日止とも書き表してきました。つまり、ヒトは、お日様・太陽の子としての日止であって、お日様の命を止める存在なのです。日本人は、そのようにヒトを捉え、考えてきたのです。
 だから、私達日本人は、皆太陽の子なのです。そして、日本人は、太陽を神さまの象徴として拝んできましたので、お日さまの命を止めるということは、太陽神の分霊を賜っているということで、霊止とも書き表してきました。つまり、神の分霊を賜って誕生したのが日止・霊止なのです。そして、男性は彦で、女性は姫とされてきました。
 ですから、ヒトは、お日さま・神さまの分霊を宿している日止・霊止ですので、○○さんと呼ばれたら、そのヒトの分霊に対して「はい」と答えることになるのですから、「明るく」「元気に」、「ハイ」と、拝むようにして「返事」をするのが正しい礼儀なのです。
 次に、「もったいない」について、話します。
 「もったいない」に表れる「日本人の心」とは、「勿体無い」であって、その語源は「物体無い」なのだそうです。つまり、「物体」は、物体であって、物体でないというのです。それは、すべては神仏の命の表れであるという意味なのだそうです。だから、物は粗末にしてはいけないのです。それが、日本人の「もったいない」の言葉の意味であり、山川草木国土悉皆成仏の世界観を示す言葉でもあったのです。
 すべての物は、神仏の表れだという感謝の心を表現した言葉として「もったいない」という言葉が使われてきたと教えられますと、本当に「もったいない」ことをしてはいけないと思うようになってきますね。
 以前、ケニアの元環境副大臣で、ノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんは、「日本語の『もったいない』の精神が世界を救う」と言いました。地球環境の問題が世界で真剣に考えるようになっていき、どのようにして地球環境を守っていくか話し合われて、その解決策を見出そうとしている時に、マータイさんは、日本語の「もったいないの精神」を世界に訴えたのです。そして、マータイさんにより、「もったいない」の日本語は世界の共通語として、使われるようになりました。
 二〇一三年・平成二十五年九月七日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開催されたIOC総会で実施されたプレゼンテーションで、二〇二〇年のオリンピックが東京で開催されることに決定されました。この時、日本は、八名のプレゼンターが東京招致へのアピールをしました。その一人、滝川クリステルさんは、「お・も・て・な・し」という言葉を紹介し、そのユニークな発表に、皆が関心を誘われ、「おもてなし」という言葉が世界中を走りました。日本の接待の心得を表現した日本語としての「おもてなし」は、日本人の接遇の心を象徴した言葉として、その興味と関心を世界中から誘いました。日本語の「おもてなし」という言葉が、「もったいない」という日本語と同様に、日本人の礼節と思いやりとを表現した日本語として世界に注目されたことは、日本人としてとても嬉しく思いました。
 最後の三つ目の日本語は、「はたらく」という言葉の意味です。
 「はたらく」は、傍を「楽にする」ことだそうです。傍、つまり周囲の人達を「楽」にする、幸せにすることが「働く」ことの意味なのだそうです。つまり、その「働く」ことは、日本の勤労観・労働観であり、日本人が働くということは、周囲の人達の生活を豊かにし、幸せにし、楽にさせるということを目的として、汗を流しているのです。自分のためでなく、世のため、人のために働くのが日本人の働くという意味なのです。だからこそ、日本人は、仕事を天職と言い、真心込めて、世のため人のために頑張ろうと誠心誠意働いてきました。それが日本人であり、日本人の誇りでもありました。そうして働くことが、生きがいでもありました。
  日本では、こうして働くことを歴代天皇自らが、「田植え」「稲刈り」をされて神事に臨まれてこられましたし、皇后陛下も養蚕と機織りをご自身でお務めになって、国賓方のお土産になさってこられました。このことは、この「はたらく」ことの意味を守っていらっしゃるということでもありましょう。日本の国ぶりを知る、貴重なこと柄だと思います。今日は日本語の「はい」「もったいない」「はたらく」の言葉を通して、日本の心をお話しさせていただきました。
                               ( 2014.07.04)